情報システム学会 メールマガジン 2011.7.25 No.06-04 [8]

連載 著作権と情報システム
第28回 文化庁案 著作権審議会第六小委員会中間報告(20)

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(20)

VII 保護期間
 著作物の保護期間は、著作権法の第51条第2項により「著作者の死後(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者の死後。)五十年を経過するまでの間、存続する。」となっており、著作権法の第53条第1項には、「法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年(その著作物がその創作後五十年以内に公表されなかったときは、その創作後五十年)を経過するまでの間、存続する。」と規定している。
 また、ベルヌ条約の第7条(1)では、「この条約によって許与される保護期間は、著作者の生存の間及びその死後五十年とする。」とし、万国著作権条約の第4条1及び2(a)では、「著作物の保護期間は、第二条及びこの条の規定に従い、保護が要求される締約国の法令の定めるところによる。」「この条約に基づいて保護を受ける著作物の保護期間は、著作者の生存の間及びその死後二十五年から成る期間よりも短くてはならない。」と規定している。万国著作権条約は、「ベルヌ条約の規定及び同条約により創設された同盟の構成国の地位に何ら影響を及ぼすものではない。(同条約第17条1)」ことから、ベルヌ条約の規定を適用することに問題はない。
 プログラムについては、「プログラム開発技術の進歩が早く、使用される期間も短いこと、投資の回収に要する期間保護すれば足りるという観点からすると、現行著作権法の保護期間は長すぎるのではないかという意見」があった。ただし、中間報告では、この意見は受け入れられなかった。「基本プログラムの中には、長期にわたって利用されるものもあり、利用価値があるものはやはりその機関保護すべきであること、また、50年間の保護期間については特段支障があるとは考えられず、むしろこの期間保護すべき意味も大きい面があること」として、別の保護期間を設ける必要がないとされたためである。また、プログラムだけをベルヌ条約の保護期間より短期間にするべきではないという主張も理由となった。

引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年

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第28回 文化庁案 著作権審議会第六小委員会中間報告(20)

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