情報システム学会 メールマガジン 2011.6.25 No.06-03 [7]

連載 著作権と情報システム
第27回 文化庁案 著作権審議会第六小委員会中間報告(19)

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(19)

VI 保護の要件
 著作権法はベルヌ条約にしたがって、無方式主義を採用している。著作権法第17条第2項には、「著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。」と規定している。
 そのため、プログラムに関する権利の享有や行使に関しても、方式主義を要せず、また方式の履行を要求することも認められない。
 たとえば、プログラムの著作権に方式主義を求めるとすると、プログラムが非常に広範囲な場において、かつ多くの人々によって製作されることを考えると、プログラムを製作しようとするときからプログラムには自動的に権利が発生するので、迅速な権利保護という観点からは、無方式主義は適切であるとしている。
 一方、プログラムの流通促進という問題を考えると、公示制度を導入することも検討すべきものとしている。ただし、ベルヌ条約との関係から、保護の要件とは切り離した公示方法を検討すべきであるとしている。具体的な公示制度については、「法的効果をともなわない公示制度」であれば、ベルヌ条約及び著作権法に反するものはないことから、容認されるものと考えていた。
 その後の著作権法改正と同時に、「プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律」が制定、施行されることになる。同法はプログラムにかかる公示的登録機関(同法第三章)を設けることで著作権法を補完するものとなっている。

引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年