情報システム学会 メールマガジン 2013.10.25 No.7 [14]

連載 著作権と情報システム
第41回 1.著作物[4]比較検証(2)通産省案と文化庁案<4>

司法書士/駒澤大学  田沼 浩

 通商法におけるスペシャル301条は、貿易の不公正慣行の是正を目的としたスーパー301条と共に、1988年包括通商競争力法が成立したときに導入された。
 スペシャル301条は、ヤングレポートによって求められた知的財産権の国際戦略の検討と制度の再検討によって設けられたものである。
 内容は、スーパー301条と同じように特許権や著作権など知的財産権保護を基づく対外的な不公正慣行の是正である。通商法301条に基づく米国通商代表部が毎年発行しているNTEレポート(外国貿易障壁報告書)において、知的財産権保護が十分守られているかどうかを、警戒レベルから「優先国」、「優先監視国」、「監視国」に分けて国別に評価している。2013年において最も悪い「優先国」はなく、「優先監視国」は中国、ロシアなどで、「監視国」としては、隣国カナダやブラジルなどが挙げられている。特に中国とロシアについてはNTEレポートの冒頭に記述があり、注意深く監視を強めていることか伺える。
 「優先国」に特定化されれば、米国通商代表による調査と当事者国との二国間協議が開始され、協議か不調に終わると通商法301条に基づく制裁措置(大統領の措置)がとられる。
 また、スペシャル301条に基づく制裁の前に行われるのが、税関による知的財産権侵害による製品の排除であり、もうひとつが関税法337条による排除命令と差止命令である。

引用・参照文献
「著作権法概説第13版」 半田正夫著 法学書院 2007年
「著作権法」中山信弘著 有斐閣 2007年
「著作権法第3版」 斉藤博著 有斐閣 2007年
「ソフトウェアの法的保護(新版)」中山信弘著 有斐閣 1992年
「特許法(第2版)」中山信弘著 有斐閣 2012年
「岩波講座 現代の法10 情報と法」 岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編 岩波書店 1997年
Michael L. Dertouzos, Richard K. Lester and Robert M. Solow, Made In America: Regaining the Productive Edge, MIT Press, 1989. MIT産業生産性調査委員会、依田直也訳、『Made in America アメリカ再生のための米日欧産業比較』、草思社 1990年
「米国発明法とその背景」、澤井智毅、経済産業調査会 2012年
「アメリカ通商法の解説」ヴェーカリックス,トーマス・V.ウイルソン,ディーヴィッド・I.ウァイゲル,ケネス・G.松下満雄監訳、商事法務研究会 1989年