情報システム学会 メールマガジン 2011.2.25 No.05-11 [11]

連載 情報の価値とインテリジェンス
第7回 インテリジェンスの利活用と顧客セグメント分析
    〜多様化した市場を見極める〜

日本経済大学教授
菅澤 喜男

はじめに

 競争分析の分析手法[1]として知られている顧客セグメント分析の基本は、市場内で顧客ニーズが明らかに異なるグループとグループ内で顧客ニーズが比較的一致するグループに分けるための分析を行うことです。この分析では、企業の製品およびサービスに組み込まれている価値を、その価値に最も魅了される顧客グループとマッチングさせることにより、競争優位につなげようとするものです。また、顧客セグメント分析を行うためには、広範囲に情報収集を行い、意思決定に役立つ優れた情報を利用することで、より正確な分析を行うことが可能となります。そのためには、普段からのインテリジェンス活動が必要であることは言うまでもありません。
 20 世紀初頭は、企業戦略よりも古典的な経済理論が幅を利かせていた時代であり、需要と供給が均一であると仮定する完全競争理論が支配的でした。また、全ての製品あるいはサービスの価格差は、情報のひずみおよび他の市場の欠陥にあるとされてきました。需要と供給が異なることで価格差が生まれるという考えは、これら市場要因が均質なものの集合であるとする正説に反するとして却下されてきたと言えます。
 企業戦略としては、規模の経済と大量生産を実現しました。しかし、需要と供給が均一であるとの考え方から、どの企業も似ており基本的には同じ製品あるいはサービスを製造・提供していると考えられてきたことになります。同様に、顧客も類似するニーズを持つ1つの大きなグループであると考えられていました。その結果、相対的な競争上のパラメータは、コストだけを頼りにしてきたと言えます。従って、それまでのビジネス的発想から出てくるアイデアから考えると、できるだけコストを抑えるために標準化された製品を大量生産すれば収益を上げことができると考えられていたと言えます。
 この競争優位を説明するための考え方は長年続きましたが、異議を唱えた卓越した研究者も何人かいました。その一人である経済学者 Edward Chamberlain[2]が1933年に「The Theory of Monopolistic Competition」を出版したことで、異なる顧客ニーズに対応するための差別化戦略が提唱された結果、市場には多数の需要曲線が存在するとの反論がなされるようになりました。最も重要な彼の主張は、「選択した複数の需要曲線を推進する嗜好や好みと製品の差別化がしっかりフィットした場合、その需要曲線は右に長期にわたって傾き、そのセグメント内の顧客は価格にそれほど敏感でなくなるため、価格の弾力性はなくなる」というものです。しかし、Chamberlain は先見の明があったにもかかわらず、彼の主張は企業戦略には適用できない学問的なものだと見なさ、それ以降何十年も無視され続けました。
 次に、1956 年に Wendell Smith[3] が The Journal of Marketing で 「Product Differentiation and Market Segmentation as Alternative Marketing Strategies」 を発表しEdward Chamberlainの理論を再び呼び起こしたと言えます。Smith は、「需要は価格と競争の機能であると定義されていた従来の経済理論を拡大し、需要を決定する主な要因の 1つとして価格に対する顧客の認識の違い」を追加しました。Smithは、経営管理者達に、顧客ニーズ、嗜好および好みに違いがあることに注意を払うべきだと促しました。また、Smith の主な主張は、不完全な市場の供給と需要の両方には異種混交が存在するというものでした。
 Chamberlain のこの見解も、完全競争の下での総需要と供給との仮定を前提とする従来の経済モデルとは正反対のものでした。さらに、Smith は現在の市場の特性は、従来の経済理論ではますます説明できなくなっていると主張しました。Smith の理論では、総需要曲線は1つしかないのではなく、複数の需要スケジュールが市場にあることを指摘していました。同様に、市場内の企業は、多様な供給機能を満たすために活動していると考えていました。Smith の研究において、企業はマーケティング戦略に立ち返り見解を拡大すべきだとの主張は重要です。大量生産の時代の市場戦略は、標準化された製品にフィットするように総需要曲線を曲げようと試みるものでした。しかし製造技術が高度化し、市場が豊かになるに従い、企業には別の戦略オプション、つまりマーケティングおよび製造戦略 (たとえば企業の個々の供給機能) を「曲げ」、不完全な市場において (たとえば総需要機能を構成する複数の需要機能) ますます多様化してきている顧客の需要にこたえる戦略があることを Smith は示唆したと言えます。
 グローバル化が進み競争が激しくなると共に、消費者が豊かになりだしたことによって、経済はプッシュ経済からプル経済に移行しました。企業は供給過剰と激しい競争に直面するようになり、規模の経済を前提とする大量生産の有効性は、受け入れがたいものとなってゆきました。その結果として、セグメント理論がそれに取って代わるようになったことになります。

1.顧客セグメント分析の概要

 顧客セグメント分析は、戦略理論に最も重要な貢献をしたと言えます。企業は競争優位を得るという究極のゴールと密接に関係するこのテクニックを、環境分析の第一段階目のステップとして使用しています。
 分析者は顧客セグメント分析を使用し、企業戦略の範囲の枠組みを設けることで、企業が集中する製品またはサービス市場を合理的に作ることができます。分析の範囲は、次の 2 つの理由から限定する必要があります。

  (1)企業は全ての顧客の要求には応えられない。
  (2)例え顧客の要求に応えることができたとしても、必ずしも企業が追求すべき最も収益を上げることができる戦略ではない。しかし、このテクニックを使用することで、競争のダイナミックスの真髄に触れることができる。

 顧客のセグメント化は、競争優位に不可欠な資源として考えることができます。市場内の顧客と競争相手の両方に対して、異種混交の市場が存在することを前提とした戦略に関係してきます。顧客によっては、企業の製品またはサービスのトータル利益と総所有コストの間の違いから生じる価値に関するコンセプトは異なります。同様に競争相手も、顧客価値を満たす異なる能力および経営資源を持っています。しかし、一般的な単一企業においては、多様な顧客価値を満たすための多様な経営資源がありません。また、単一企業が多様な顧客価値を満たそうとすること自体、必然的に一部またはどの顧客も満足させない結果になってしまいます。
 市場または業界内の全ての企業が全ての顧客に対して同じような製品を販売しようとすれば、製品に違いがなくなるので業界の魅力は次第に落ちてゆきます。また、顧客は極端に価格に敏感になり、価格戦争に陥った個々の企業の競争上のポジションは下がります。収益を上げることができる企業は、低コストの製品を提供できる企業だけとなり、しかも大多数の顧客は満足しません。このような状況は、顧客セグメント分析と企業が描いている戦略的なシナリオと比較してみれば、企業は自社の固有の経営資源で満足させることができる特定の顧客グループに対してのみ価値あるものとして認識することができます。このセグメントにいる顧客は、自分の嗜好や好みを満足させるものであるのならば、進んで高い値段を払います。その結果、企業はより強い競争上のポジションと収益を享受できます。これがセグメント化を必用とする理論的根拠です。
 実際、顧客は企業の存在理由であり、セグメント理論にはこの需要を志向した考え方が織り込まれています。しかし、競争優位を確保するには顧客を満足させるだけではだめです。企業として素晴らしい財務成績を上げる基礎は、利益になる顧客を満足させることであり、経営管理者はこれを認識していければなりません。

2.セグメント化プロセス

 セグメント化のプロセスは、企業の顧客価値を追求するための企業の資産と能力を識別する分析を深掘りするためのものです。全ての成長戦略は、顧客価値を追及するために持ち得る経営資源を最大限に利用することを前提としています。適切な成長および多角化戦略は、選択した顧客セグメントに対して異なる価値を提供するかもしれませんが、企業が有するビジネスの強みに基づいたものでなければなりません。この顧客価値の追求と成長戦略との関係を結びつけるための分析は、競争優位を実現するためには固有のものです。
 企業が有する多くの潜在顧客は、企業の経営資源および能力から得られる価値と潜在顧客が認識する価値とがマッチしない限り、実益を得ることはできません。あまり満足の得られない顧客は、完全に満足している顧客と比べ、高い値段を払おうとはしません。あるいは、購入しないかもしれません。企業の経営資源が限定されていることを考えた場合、最大の収益を挙げることができるセグメントに企業は全てのエネルギーを注ぐべきです。
 セグメント分析は、競争優位を追求する際に、戦略的に考えた需要と供給との両方の見込みを統合する全体的な枠組みです。需要は、特定の顧客セグメントのニーズ、好みおよび嗜好を探すことによって満たされます。供給も、企業が提供する価値で顧客ニーズを最大にすることができるセグメントに投入することによって満たされます。顧客セグメント分析が正確に実行された場合、これらの対象セグメントは企業が提供する優れた価値に対して顧客は高い値段を払います。また異なる経営資源をセットで使用するライバル企業は、そのレベルでの顧客ニーズを満たす価値を提供することができないので、対象セグメントは非常に忠誠な市場として確保することができます。このようにして競争優位の 2 つの条件、つまり永続的および優れた財務成績がセグメント理論によって満たされます。図1は、企業の経営資源と顧客価値が強く合致した場合に約束される競争優位を示しています。

図1 顧客セグメンターション分析の戦略的なブロック

出所:戦略と競争分析、菅澤他訳、ページ182(原著:Strategcic and Competitive Analysis, Craig S. Fleisher and Benssouson)

図1 顧客セグメンターション分析の戦略的なブロック

 この最適なシナリオに対し 2 つの警告があります。第一に、企業はおとり商品の存在に注意しなければなりません。つまり収益を上げることができない活動がより大きな活動の一部であり、それが企業の対象セグメントに価値を提供する場合があります。例えば、自動車販売店であまり収益のない新車販売は、新車販売の結果として非常に収益の上がるサービス、メンテナンスおよび修理につながるなどがあります。2 番目に、セグメント戦略はダイナミックに考えなければなりません。継続的に顧客価値分析を行うことで、セグメント戦略によって確保した最初の競争優位を維持してゆかなければなりません。つまり企業は、常に顧客価値が変わる可能性、企業の経営資源の価値が低下する可能性、ライバルが提供するものの相対価値が上昇する可能性に注意しなければなりません。
 顧客をセグメント化し分析することは、セグメント化を通じて競争優位を実現する可能性を拡大すると共に、市場の状態をより正確に把握するという戦略的な意義があります。Davis と Devinney[4] (1997) は、これの分析の意義を図2 で示すような内容で要約しています。

条件 1
前提: セグメント化は次の場合に戦略的に意義のあるものとなる。
 ・市場内の消費者が、価格感応性を上回る異なるニーズ、あるいは好みや嗜好を持っている
 
自社が提供する顧客価値
顧客価値 = VA(X) − Px
 ここで A= 顧客グループ
   X= 企業の製品の特性
   Px= 企業が提供する製品の価格
VS
ライバルが提供する顧客価値
顧客価値 = VA(Y) − Py
 ここで A= 顧客グループ
   Y= 企業の製品の特性
   Py= 企業が提供する製品の価格
Y<X であり、Py<Px (つまり、製品Y は劣ってもいるが価格も低い) であるので、ライバルが提供する顧客価値が自社が提供する顧客価値を上回った場合、顧客は製品 Y を購入することになる。
つまり VA (Y) − Py > YA (X) − Px
また逆に同じ条件下のとき、企業の優れた製品の特性が低価格の製品 Y の価値を上回る場合、消費者は製品 X を購入する。
つまり VA (X) − Px > YA (Y) − Py
条件 2
前提: セグメント化は次の場合に戦略的に意義のあるものとなる。
 ・異なる好みや嗜好を持った顧客グループが存在する
 ・規模の経済よりも、範囲の経済および集中が市場を支配している

理論:
仮定:顧客グループ A は製品 X を好む
   顧客グループ B は製品 Y を好む
しかし各顧客グループの好みや嗜好は各製品の価格に影響を与えます。
つまり
VA(X) − VA(Y) > Px − Py および VB (Y) − VB(X) > Py − Px

このシナリオの場合、企業は顧客グループ A を獲得するために Px = VA(X) で価格設定をし、ライバルは顧客グループ B を獲得するために Py = VB(Y)として価格設定をすることができます。これは市場が次の 2 つの状況に限って実行可能です。

(1) 集中の経済が支配的: 範囲が狭いことの効率性から、特化している企業は顧客の切り替え基準点価格以下で顧客に高価値を提供することができます。
  (たとえば VA (X) − VA(Y) > Px − Py)
(2)
範囲の経済が支配的: 複数のセグメントを対象しているための相乗効果から、企業は顧客の切り替え基準点価格以下で顧客に高価値を提供することができます。
  (たとえば VA (X) − VA(Y) > Px − Py)

規模の経済が支配的な市場では、顧客の差別化基準値以下にコストを下げることができるメーカーが一部ある。例えば、(規模の経済のために) ライバル企業がコストを下げることができる VA(X) − VA(Y)<Px − Pyとなり、顧客グループ A は製品Yに移行してしまいます。 このような市場では、セグメント化は意味がないことになります。

出所:戦略と競争分析、菅澤他訳、ページ183(原著:Strategcic and Competitive Analysis, Craig S.Fleisher and Benssouson)

図 2 市場セグメント化分析の経済的論理

3.セグメント化と成長戦略

 図2 からも分かるように、顧客価値が価格よりも好みや嗜好をより重視する市場、あるいは複数の顧客グループが存在する市場、その中で規模の経済よりも範囲の経済および集中の経済の方が支配的である市場においては、セグメンテーション戦略を効果的に実行することが可能です。このような市場では、顧客セグメンテーションに基づく成長戦略および多角化戦略は、強力で差別化された競争のポジションを通じて、利益ある成長を実現できる可能性が強いと言えます。
 利益になる顧客を探すことによって企業の成長を促すことができ、多角化へと向かわせることができます。企業が成長するには、次の 4 つの基本的な戦略を採用すべきだとAnsoff (1957)[5] は述べています。
1. 市場への参入
2. 製品の開発
3. 市場の拡大
4. 多角化
 これらの戦略のうちどれが利益ある成長へつながるかを判断するためには、顧客のセグメント化は最良の分析ツールだと言うことができます。最も利益を上げることができる戦略は、企業独自の製品およびサービスに最高の価値を与えることができる顧客セグメントをターゲットとするものです。これらの顧客グループは最高の値段を進んで払い、ライバルの方へ移行しようとは考えません。
 図3 の Ansoff のマトリックスが示している通り、各戦略がターゲットとするセグメントの顧客価値が違う場合でも、企業が有する固有の核となる経営資源によって、この独特の価値を強力に推進しなければなりません。これ以外の前提に基づく成長および多角化では、利益ある成長は望めませんし、競争優位も確保できません。セグメント化では、利益あるセグメントにターゲットに絞り、他はすべて無視するという戦略上のトレードオフができる体制を作ることで決定できます。

図3 顧客セグメンテーションを通じた成長戦略

出所:戦略と競争分析、菅澤他訳、ページ184(原著:Strategcic and Competitive Analysis, Craig S. Fleisher and Benssouson)

図3 顧客セグメンテーションを通じた成長戦略

 1980年代後半、市場のセグメント化は、より特化したニッチマーケティングに発展しました。この究極とも言えるのが、従来の市場セグメント戦略の基礎を前提としているのが、現在挑んでいるマスカスタマイゼーションのコンセプトです。
 マスカスタマイゼーションは、情報革命がもたらした最も革新的な発展の1つです。コンピュータ支援設計および製造 (CAD/CAM) などの新技術は、規模の経済との従来のトレードオフをぼやけた状態にしています。これらを利用し柔軟に製造できるようになったことにより、企業は個々の顧客のニーズに合わせ、各ユニットをカスタマイズしながら大量生産を実現できるようになりました。同様に情報技術も個々の顧客のニーズに合ったサービスを提供するのに役立っています。以前は差別化、ボリューム、質、そして低コスト間に明確なトレードオフが存在していましたが、現在では同時に実現できるようになっています。
 マスカスタマイゼーションの例として、日本で見られるモジュール形式の住宅があります。住宅購入者は、自分の住宅を数時間で設計することができます。工程のスケジュールや必要な材料など、コンピュータプログラムがすべての計画を作成します。その後、計画は電子ファイルで工場に送られ30日から60日で、完全な注文によるデッキおよび温室がある2階建てスリーベッドルームの住宅が、非常にリーズナブルな価格で建築できるようになります。これは以前でしたら完全に不可能なことで、目を見張るような日本企業が成し得た偉業だと思います。この種のマスカスタマイゼーションが、現在の我々の経済のあらゆる局面で広がる傾向にあります。
 マスカスタマイゼーションは、直線的に発展したものではなく、循環的にマーケティングのコンセプトを出発点に戻したものだと見ることができます。産業革命以前、中小企業はそれぞれの顧客に対応した販売を行ってきたと思われます。規模の経済を前提とする大量生産では、マスマーケティング(対象を特定せず=全ての消費者を対象にして=画一化された方法を用いて行うマーケティング戦略、マーケティング活動のこと。エリアマーケティング、セグメントマーケティング、ダイレクトマーケティングなどの反意語がある。大量生産と大量販売、マスメディアを用いた広告の大量投入を前提としており、市場の成長期にマーケットリーダー=ある市場で最大のシェアを持つ企業=が用いる手法としては有効だが、消費者の価値観が多様化した市場では特定のニーズに応えきれない場合がある。Wikipedeaより)を促進させてきました。市場は均質ではないとするセグメント化のコンセプトは、限られた技術が引き起こした理論の足かせに挑みました。しかし技術は現在、セグメント化という確立された市場理論にも戦いを挑んでいます。市場をさまざまな顧客グループの構成物であると見るのではなく、個々の顧客の構成物と見るようになってきています。つまり、今日多数ある市場において、セグメント化のレベルは1人を対象とする市場に線引きされていると言えるかもしれません。市場シェアやセグメントシェアではなく、今日ふさわしい測定単位は、個々の顧客すなわち1人を対象とする市場になっているものと考えられます。
 更に、より広い視点から見た場合、マスカスタマイゼーションはセグメント化理論の妥当性に挑むのではなく、むしろ深く追求していると言えます。そのような意味で、マスカスタマイゼーションはセグメント化の究極的な回答だと言うことができます。しかし、セグメント化がマーケティング戦略理論の最終的な成果と見られていたのと同様に、また技術は、マスカスタマイゼーションのコンセプトを拡大しています。各顧客に複数のセグメントがあると見られています。つまり、1 人の顧客は異なる市場に、異なる時間に、異なる場所にいるものと考えられます。商用のための行きの飛行機ではコーラを頼み、返りはビールを注文する飛行機の乗客などです。マーケッターの次なる挑戦は、個々の顧客に存在する複数のセグメントをターゲットとすることになります。

4.分析を行うための留意点

(1)市場志向になるためのツール
 セグメント分析によって企業は市場志向になります。製品の製造後にそれを売ろうとしたり、似たような市場戦略で異なる成分から成る市場をターゲットとするのではなく、セグメント分析はまず企業に顧客価値を識別し、次に顧客のニーズを満足させるための最適な市場および製品戦略を構築することを可能にします。
(2)インテリジェンス プロセスを効果的に補完するもの
 セグメント分析の重要な構成要素に、企業の製品またはサービスがどのように競争相手のそれに匹敵するかを調べる競合分析が含まれています。同様に、セグメント化ではこのプロセスの間に市場での変化を発見することができる場合もあり、これが企業にとって早期警告になる場合があります。
(3)新製品開発の弾み
 セグメント化に含まれるニーズ分析を通じて対処されていないニーズを発見することは、しばしば新製品を開発する機会の発見につながることがあります。リードユーザーを識別することによって、内部で生成することができるものよりかなり価値の高い新製品に関する具体的な情報を得ることができます。
(4)柔軟性
 セグメント化分析は、現在の戦略の評価および検討中の将来の成長戦略の評価にも応用することができます。さらに、セグメント化分析は市場戦略の製品、価格、場所、販売促進、そして顧客の構成要素の戦術的管理の優れた手引きとなります。
(5)セグメント化ではセグメントの総合的なプロフィールしか分からない
 この分析方法は強固なものですが、セグメント全体が合成されたものなので、それが分析結果を利用する制限ともなっています。例えば、顧客の特質に基づいた予測を行っても、セグメント分析では識別できなかったより、影響力のある行動上の要因が基で売上につながらない場合があります。
(6)マスカスタマイゼーションへの適応性
 今日ますます複雑化してきた市場と顧客セグメントが急速に増加することが、セグメント化をいっそう困難にしています。さらに、広範囲に広がっているマスカスタマイゼーションの可能性は、セグメント化が適切であるかどうかに挑み続けることとなります。マスカスタマイゼーションの強固なまでの主唱者たちは、この発展がセグメント化を陳腐化させたと言っています。
(7)セグメント化は戦略パズルの1ピースでしかない
 企業のセグメント分析の評価が高く、またうまく実行されていたとしても、戦略的に何の利益も得られない場合があります。市場戦略の5つの P(6.分析例のステップ3で詳しく説明)のサポートとともに適切な総合的戦略が依然として必要です。さらに、効果的に実施するには、経営陣に市場志向になってもらう必要があります。

5.セグメント分析のステップ

 顧客をセグメント化するプロセスは体系的に見えますが、それでも各段階において分析者にはかなりの創造性が求められます。顧客セグメント化分析を進めるためには、分析をしている間は水平思考で行うことを推奨します。プロセスの枠組みは、人文科学の組み合わせとして統制の取れたアプローチとして推奨されています。
 顧客セグメント分析は、次の3つの基本的なステップを含む枠組で構成されています。
(1) セグメント化
(2) ターゲッティング
(3) 戦略的ポジショニング

ステップ1: セグメント化
 市場をセグメント化する方法は多数あるために、複雑に見えるかもしれません。分析を正しく行うためには、セグメント化の目的を明確にしておくことが重要です。セグメント化分析の目的は、セグメント内の類似するおよびセグメント間で異なる顧客グループを識別することです。このために、各セグメントカテゴリからいくつか異なる種類の変数を選択することが必要です。次に示すセグメント基準となり得るリストは、決して完全なものではなく一般的な手引きおよび分析のスタート地点として利用できる基準が提示されています。

消費市場のセグメント基準

顧客の性質 − 「だれがなにを購入するか」を問うユーザーを基準としたアプローチ


人口統計学的変数              社会的変数
・年齢                   ・収入
・家族のサイズ               ・階層
・配偶者の有無               ・職業
・性別                   ・教育
                      ・宗教
                      ・民族性

地理的変数                 ライフスタイル/性格変数
・グローバル、半球、国、州、町、郵便番号  ・態度/意見
・天候                   ・興味
・田舎 VS 都会             ・職業
                      ・好みと嗜



製品に関連したアプローチ − 「なぜ彼らは購入するのか」を問う行動を基準としたアプローチ


ユーザーの種類               価格敏感度
・レギュラーユーザー            ・低コスト志向
・非ユーザー                ・高コスト
・最初のユーザー              ・高品質/差別化
・潜在的なユーザー

消費パターン/使用頻度           知覚される利益
・低                    ・業績
・中                    ・品質
・高                    ・イメージアップサービス

ブランドロイヤリティ            応用
・忠実/満足                ・購入機会/購買状況
・実験者                  ・メディアへの露出
・不満足/離反者
・気づかない


 次に、消費市場と業界(あるいは産業)市場とを区別しておくことが重要です。業界市場は、消費市場と比較しさまざまな点でかなり違います。例えば、地理上の区域がかなり広い、一回の購入が大量ではあるが回数が少ない、組織の購入決定は個人での決定よりも複雑、個人に向けた販売促進活動などが重要である。これらの違いゆえ、業界市場のセグメントには異なる変数が必要です。

業界市場のセグメント基準

顧客の特質 - 「だれが何を購入するのか」を問うユーザーを基準とするアプローチ


・業界(あるいは産業)の種類: 例、グローバルな業種  ・企業規模
・地理                        ・採用されている技術
・業界のポジション


製品に関連するアプローチ - 「なぜ彼らは購入するのか」を問う行動を基準とするアプローチ


・消費パターン/使用頻度          ・売り手/買い手との関係
・最終ユーザーの用途            ・買い手の精神的な人口統計
・知覚される利益              ・購買方針
・購入量


 通常、消費市場のセグメントは製品に関連する行動を基準とし、業界市場のセグメントはユーザーを基準とする顧客の性質を基準としています。一般的にユーザーを基準とする分析は、よりとっつきやすく実行にかかる費用が少ないが、市場の実態を把握することが難しい場合があります。逆に、製品を基準とした分析は、コストは少なくて済みますが、市場の実態も把握し難い場合があります。各アプローチがもたらすメリットを考えた場合、いずれからもユニークな事柄を知ることができるので両方とも適時利用することを勧めます。
 セグメント分析の主な基準を選択した後、セグメント内で類似した内容のセグメント、またセグメント間で異質な内容のセグメントを探します。基準を満たすセグメントを識別するツールとテクニックは、統計分析や他の定性な分析など多数あります。

 ・定性的なメソッド 回帰分析、要因分析、クラスター分析など、多くの統計分析ツールがあります。
 ・定量的なメソッド 消費者調査、取引先分析、リードユーザー分析、現在の顧客との対話、特性要因図、ブレインストーミング、セグメントツリーなどがあります。

 セグメントの基準となるものは多数ありますが、多くの組み合わせが考えられるので、絞り込むためのプロセスを何回も繰り返す必要があります。

ステップ 2: ターゲティング
 セグメントを絞り込むことができたら、さらに分析を進めるために特定のセグメントを選択する必要があります。そのセグメントが適しているかどうかは、次に示す4 Rテストから判別することができます。

 R1 − 市場を評価する: セグメントは定量的および定性駅な評価をすることができるか。
 R2 − 現実的な規模か: セグメントは十分大きく、そのセグメントは戦略に耐えられるか。
 R3 − 到達可能か: セグメントは実行可能な戦略に到達可能か。
 R4 − 反応: セグメントは実行可能な戦略および提供された製品に反応するか。

 4 R テストは、明らかに残すべきでないセグメントを排除するための大まかな最初の提案です。しかし、ここで注意しなければならないのは、多くの場合、複数のセグメントが 4 R テストをパスします。さらにセグメントを絞り込むためには、より詳細な分析として競合のプロファイリング、戦略グループ分析などを含む競合分析を行う必要もあります。また、STEEP 分析、SWOT 分析、業界構造分析など、セグメントが所在すると思われる市場の一般的な状態を分析するための外部分析も必要となる場合もあります。
 競合分析および外部環境を分析する観点から各セグメントをフィルタリングした後に、企業内部の経営資源をしっかりと検査する必要があります。企業内部の経営資源とセグメントとして認識した顧客価値とをマッチさせることは、セグメントから見た戦略目的をターゲットとして扱うので、恐らく顧客セグメント分析プロセスの中でも最も重要な段階だと言うことができます。各セグメントの要求と欲求が最も強くフィットするところを探すためには、顧客価値分析など、いくつかの分析テクニックを利用することで実現できます。顧客セグメント分析の結果から、各セグメントで顧客が重視するものを正確に定義することができます。各セグメントの顧客価値をサポートするのに必要な経営資源を識別するための分析としては、企業内部の経営資源を分析する方法として、経営資源分析と価値連鎖分析が有用です。顧客価値分析と内部経営資源分析間で最も強力にフィットするセグメントを選択します。企業が優れた価値を提供できるよう、選択に際しては競合分析および外部分析を考慮に入れて行う必要があります。他に、各セグメントの魅力とビジネスの強みとをマトリックス上で比較し、分析をまとめるテクニックもあります。
 ターゲッティングのプロセスの最後の段階では、各セグメントで厳格な財務のテストを行うことで収益性を確認する必要もあります。市場機会がかろうじてある場合や企業がその機会をものにできる可能性が少ない場合などは、収益性は保証されません。各セグメントのライフタイムの価値がそのセグメントのマーケティングのコストを上回った場合のみ、収益が出ます。また、企業内部の経営資源と顧客価値との間のフィットが実際に存在する場合、収益は出ます。この収益を確保するための方法としては、次に示す方法で概算をすることができます。
顧客獲得のコスト

生涯価値(ライフタイムバリュー)の算出
予想される 1 年のマーケティングコスト × 予想される 1年の反応比(速度)×
粗利益 × 現在価値 − 獲得にかかったコスト = 生涯価値

ステップ 3: 戦略的ポジショニング
 このステップでは、競争相手が提供するものに対し、製品またはサービスをどのように戦略的にポジショニングするかを示すことです。マーケティングミックスで言われる4 P の管理を最善に行うにはどのようにすればよいか、戦略的ポジショニングを行うことで多くのことがわかります。戦略的ポジショニングに関連した分析としては、結合(conjoint)分析、競合マップ、パフォーマンスマトリックスなども戦略的にポジショニングするテクニックとして利用できます。
 4つの P は基本的な戦略的ポジショニングを戦術的に実現するために必要です。
1. Product(製品): 顧客価値が埋め込まれたもの
2. Price(価格): 高い、低い、parity
3. Promotion(プロモーション): 宣伝、個人販売
4. Place(場所): 流通経路の管理
 顧客がサービスに重要な価値を置く場合、5番目の P、つまり「People(人)」がこれに加わります。4 P を取り巻く財務上のパラメータは、生涯価値を評価するのに使用したものと同じでなければなりません。

6.分析例 −スポーツクラブにおけるシニア年齢層市場のセグメント化ー

 シニア年齢層向けのスポーツクラブを例とした場合、50歳以上のシニア年齢層の市場がますます魅力的な市場セグメントになってきています。ここで何か矛盾に気が付きませんか。この市場を単一セグメントにするということは、マーケティング担当者が自ら危険を犯して何年間も顧客を固定概念化していることを意味しています。実際、シニア年齢層の市場には、多数のセグメントがはっきりと存在し、それらを特定化したマーケティング担当者の前にはユニークなビジネスチャンスがあります。これを実現するには顧客セグメント分析が有用なツールとなりまが、スポーツクラブの施設を対象としたマーケティング戦略としてシルバー年齢層の市場のセグメント化を試みた1999年に行われた英国の研究からこの有用性を理解することができます。今日の高齢者の寿命と健康を考えた場合、より適切なセグメント分けは健康と社会的な自立との強く関係してきます。

スッテプ1:セグメント化
最初の基準でセグメント化すると、次に示す4つのセグメントが考えられます。

(1)若い高齢者
・定年前、健康上の制約はない
・自立している、レジャーに費やす時間に制限がある。
(2)新しい高齢者
・最近定年になった、若干健康上の制約がある
・自立している、かなりレジャーに費やす時間がある
(3)中程度の高齢者
・若干健康上の制約がある
・あまり支援は必要としない、かなりレジャーに費やす時間がある
(4)非常に高齢
・かなり健康上の制約がある
・かなり支援を必要とする、かなりレジャーに費やす時間がある

 新しいタイプの高齢者が、スポーツ施設の最大の対象セグメントとして選択されました。さらに実像を把握するため、可処分所得の変数(消費者A,B,C,D)が導入されました。

消費者 A
・可処分所得がかなりある、健康状態良好。
・社会的な支援/スポーツ活動から市場との相互交流がかなり必要である。
消費者 B
・可処分所得は少ない、健康状態良好。
・社会的な支援/スポーツ活動から市場との相互交流がかなり必要である。
消費者 C
・可処分所得がかなりある、健康状態良好。
・社会的な支援/スポーツ活動から社会的な相互交流はあなり必要でない。
消費者 D
・可処分所得は少ない、健康状態良好。
・社会的な支援/スポーツ活動から市場との相互交流はほとんど必要でない。

 ここでシルバー年齢層の市場にはセグメントが1つしかないと企業が考えてしまった場合、非常に有望な市場のポジショニング戦略に気づかなくなってしまうことがあります。新しい高齢者市場では、特に費者 A と B がもっとも利益となる市場ニッチであることがわかります。この2つのグループのプロフィールは、特に健康、レジャーに費やす時間、独立度、高レベルな社会との接触の傾向が似ています。2つのグループ間の唯一の違いは、違う価値の提供の基礎となりうる裕福さです。高級会員制を目指すスポーツクラブの有力な顧客として考えられる候補者は消費者 A であることが分かります。また、消費者BはYMCAなどのような利用者負担を原則とした公共施設に敏感に反応するでしょう。
 顧客関係重視マーケティングが競争の前提になってきていることを考え、次に示す表は、モチベーションから見たセグメント分けした結果です。

モチベーション
内因性外因性
裕福/社会的なサポートの必要性が高い“楽しむ人”
・楽しみ中心
・集団活動
・スタッフによる指示
・顧客に配慮/顧客との関係
・高品質な施設
“健康を求める人”
・健康促進
・健康維持
・医師の紹介
・スタッフによる指示
・顧客に配慮/顧客との関係
・高品質な施設
裕福/社会的なサポートの必要性が低い“裕福な人”
・個人的な活動
・自主的
・スタッフの関与が少ない
・高品質な施設
“裕福で健康を求める人”
・健康促進
・医師の紹介
・自主的
・スタッフの関与が少ない
・高品質な施設
裕福でない/社会的なサポートの必要性が高い“親しみやすい人”
・ディスカウント
・スタッフによる指示
・楽しみ中心
・集団活動
・顧客に配慮/顧客との関係
“指示される人”
・ディスカウント
・健康促進
・健康維持
・医師の紹介
・スタッフによる指示
・顧客に配慮/顧客との関係
・ボランティア コーチング
裕福でない/社会的なサポートの必要性が低い“自立した人”
・ディスカウント
・自主的
・スタッフの関与が少ない
・楽しみ中心
“間接的に指示れる人”
・ディスカウント
・健康促進
・健康維持
・開業医の紹介
・自主的
・スタッフの関与が少ない

ステップ2: ターゲティング
 最後に示したセグメント分けを基にターゲティングを行うことで、さらに可能な製品のマーケティング戦略が明らかになります。例えば、楽しく・社交的・高品質な施設および健康的な活動は、「時間を楽しむ人」、「健康を求める人」、「親しみやすい人」、「指示される人」など、異なるモチベーションを持ったいくつかのグループを引き付けることになります。
 さらに重要なことは、顧客関係を重視したマーケティングを行う場合、各セグメントのモチベーションは戦略的に見て非常に重要です。社会との係わりとスタッフとの交流の重要性を考えた場合、これらの市場で成功するには、人的資源と教育が重要です。顧客に価値を提供するものとして、主要なコンポーネントとなるのは、スポーツセンターのスタッフであると理解することができます。

ステップ3:戦略的ポジショニング
 セグメント分析の妥当性を確認するために、ターゲティングを通じて実際のサンプルがテストされました。ここの例で取り上げた英国のヘルスクラブは、シルバー年齢層の市場に的を絞り大成功を収めたと言う実績があります。短期間で閉鎖されてしまうクラブが多いということで知られているスポーツクラブ市場において、この例では顧客維持率が 76%で、会員になるために待っている人も多数いることになります。このヘルスクラブの効率的なセグメント化から、その成功の要因を知ることができます。

セグメンテーションに関する戦略ヘルスクラブが提供する価値
多くのメンバーは、「楽しい時間を過ごす」ことと「健康を求める」というモチベーションを持つセグメントに属する。グループで行うスポーツが多数ある。
メンバーがスポーツと社会活動の計画立案に参加できる。
多くのメンバーは、「裕福な人」と「裕福な健康を求める人」というモチベーションを持つセグメントに属する。個人で参加できる活動も多数ある。
スタッフとの交流スタッフは選抜されており、顧客サービスそして様々なセグメントの心理的なニーズにおいて十分な訓練を受けている。ファーストネイムで呼ぶ。暖かくフレンドリーな人柄を有し柔軟性のあるスタッフが揃っている。
医師の紹介骨粗しょう症などの健康状態のためにスタッフがアドバイズするためにスポーツセラピーの教育を受けている。
質の高い施設樹木で覆われた快適な環境、高品質の施設である。

 このセグメンテーションは緊急の戦略であったにもかかわらず、このヘルスクラブがセグメント化された市場から利益を得たのは明らかです。セグメント戦略のない競争相手は、やみくもにもがいているように思えます。このヘルスクラブがある地域では、38%は高齢者であることを考えると会員になるために待たされることは、大きな驚きではありません。

7.その他、関連する分析ツールとテクニック

 顧客セグメントを的確に捉えるためには、他のいくつかの分析と組み合わせることで有効なセグメントから見た戦略が確立されます。顧客セグメント分析をさらに効果的に利用するためには、次のような各種分析手法があります。どのような組み合わせをするかは、ケースバイケースですが、業界分析、競争相手分析そして価値連鎖分析などとの組み合わせは効果的であると思います。他の組み合わせとしては、ベンチマーキング、競争相手のプロファイリング、顧客価値分析、機能の能力とリソース分析、GE ビジネススクリーン、業界分析、STEEP分析、SWOT 分析、価値連鎖分析などがあります。これらの各種分析については、参考文献[1]を参照してください。ただし、分析することが目的ではなく、多くの情報を集め、インテリジェンスを生成してこそ分析結果が意志決定プロセスの過程で利用可能となることに留意してください。

文献

[1] 戦略と競争分析、菅澤他訳、コロナ社、2005年(原著:Craig S. Fleisher & Babette E. Bensoussan(2003). Strategic and Competitive Analysis, Prentice Hall, N.J.)
[2] Chamberlain, E.H.(1965). The teory of monopolistic competition. Cambridge, MA: Irwin.
[3] Smith, W.R.(1956). Product differentiation and market segmentation as alternative marketing strategies. 3-8.
[4] davis, J., & Devinnery, T.(1997). The essence of corporate strategy: Theory for modern decision making. St Leonards, Australia: Allen & Unwin.
[5] Ansoff, H. (1957). Strategies for diversification. Harvard Business Review, September/October, Vol.35, No.5. 113-124.