情報システム学会 メールマガジン 2010.1.25 No.05-10 [10]

連載 著作権と情報システム 第22回

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(14)

V 権利の制限
 一 権利を制限する規定の再検討

(3) 第35条 学校その他の教育機関における複製等
 著作権法第35条第1項は、「学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」として、学校などの教育機関の教師と生徒が授業で使用するという一定の範囲で、著作権者の利益を不当に害しない限り、プログラムの複製を授業の中で使用することを認めている。それは教育機関以外がプログラム作成等の実習をするために、既存のソースプログラムの複製、配布等を認めている訳ではない。教育機関の授業を担当する教員と生徒が授業過程で使用する場合で、かつ授業に必要と認められる限度だけ、既存のソースプログラムの複製、配布等が認められるのである。
(4) 第42条 裁判手続等における複製
 著作権法第42条第1項は、「著作物は、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」として、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政の目的のために内部資料という特定の目的に限り、必要限度において複製を認めているものである。裁判手続きの証拠資料や行政機関の統計資料などを示すものであるが、例えば裁判資料作成の数値計算や行政統計の事務のために他人のプログラムの複製を認めるものではないと中間報告では判断している。
 以上、(1)〜(4)で示したように、中間報告では著作権法第30条、第32条、第35条及び第42条をプログラムに対してそのまま適用しても、何ら問題が生じないという結論に達している。

引用・参照文献

・著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
・著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
・ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
・岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年