情報システム学会 メールマガジン 2010.1.25 No.04-11 [9]

連載 著作権と情報システム 第11回

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(3)

II 保護の対象(つづき)
(3)ファームウェア化されたプログラムの著作物性

 自動車、電子レンジ、テレビ、冷蔵庫など身の回りのすべての製品にファームウェア化されたプログラムが組み込まれている。
 ROMに組み込まれたプログラムの著作物性については、PCなどの外部記憶装置に組み込まれたプログラムと機能として、大きく変わるところはなく、ROMに固定化されているのに過ぎない。よって、このようなROMに組み込まれたプログラムも著作物であると考えられる。

(4)プログラムのモジュールの著作物性

 プログラムはいろいろなモジュールによって構成されているため、全体のプログラムの著作物性とは別に、「一つのまとまりのある思想的と言い得る限り」、そのモジュールのプログラム毎に著作物性を有するものと考えられる。既に創作されたプログラムやモジュールのプログラムを組み合わせた全体プログラムについても、素材の選択又は配列によって創作性を有すれば、編集著作物(著作権法第12条)に該当する。もちろん編集著作物によって、個々のモジュールのプログラムの著作物性を害されることはないので、利用するには著作者の許諾を有することになる。

(5)その他のソフトウェアの著作物性

 システム設計やプログラム設計によって表された設計書、フローチャートなどについても、著作物として保護されることが、1973年6月著作権審議会第二小委員会による報告書でも明記されている。もちろん、フローチャートからアルゴリズム(解法)を摘出して新たにプログラムを作成しても、プログラムはフローチャートと全く別の著作物となるため、著作権侵害にはならない。

 三 アウトプットされる創作物の著作物性
 プログラムによって実行されてアウトプットされたものも、著作物として認められる。著作物として認められるには、思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものでなければならない。プログラムとその実行によってアウトプットされたものは、個々に独立した著作物として考えられる。たとえば、プログラムの実行によって、ユーザインターフェースに創作的な表現された場合などである。

まとめ
 本中間報告では、これらの検討により「現行法上のプログラムが著作物であることは明らかである」としながらも、「著作物の例示規定(著作権法第10条)にプログラムを明示すべきであり、これに関連してプログラムの定義規定を設けることを検討すべきである」としている。
 中間報告に沿って、著作権法第10条第1項第9号に「プログラムの著作物」が、同条第3項に用語の定義が設けられた(昭和60年6月14日法律第62号により改正)。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

引用・参照文献

・著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
・著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
・ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
・岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年
・標準パソコン用語辞典(2009〜2010年度版) 赤堀侃司監修 周和システム第一出版編集部 2009年