情報システム学会 メールマガジン 2010.1.1 No.04-10 [14]

連載 プロマネの現場から
第21回 IT技術者にとっての最高のプレゼント

蒼海憲治(大手SI企業・金融系プロジェクトマネージャ)

 本メルマガは、2010年元旦に配信されるとのことですが、この原稿を書いているいまは12月半ばであり、街にでるとクリスマス一色になっています。客先のオフィス間を移動する際には、賑やかなクリスマスソングの中に、色とりどりのイルミネーションに目を奪われることがよくあります。
 クリスマスといえば、お正月のお年玉と並んで、子どもの頃からプレゼントに期待に胸をふくらませて毎年迎えたものでした。お目当てのプレゼントは少し前から決まっていることが多かったように思いますが、学生であれば、2学期の成績や部活動での戦績などを子どもなりに考えてプレゼントのランクを調整した上で、両親と事前交渉?していたように覚えています。

 最近のクリスマス・プレゼントの動向がどういうものかよくわかっていませんが、友人や雑誌などで見聞きする限り、定番には変化はないようです。モノであれば、腕時計やバッグ、アクセサリ、ネクタイだし、クリスマスイブ前後に催されるコンサートやライブ、ミュージカル等の舞台の観賞、そして、小旅行やホテルでのお泊まり、といったところでしょうか。
 先日、家族へのプレゼントを考えている途中で、SEにとってのクリスマス・プレゼントって何だろうか、とふと思いました。気になったので、プロジェクトのメンバーや職場の同僚等へのメールと、この時期は昇格試験もあったので、面接官役として模擬面接での質問として尋ねてもみました。

 新人から20代後半の若手・中堅層に対する質問としては、

1.SEのあなたにとって(最高の)クリスマス・プレゼントは何ですか?
2.SEのあなたが、プロジェクトおよびプロジェクトメンバーに対してあげられるクリスマス・プレゼントは何ですか?

 30代以上の中堅からベテラン層に対する質問としては、

3.プロマネ(プロジェクトリーダー)のあなたにとって(最高の)クリスマス・プレゼントは何ですか?
4.プロマネ(プロジェクトリーダー)のあなたが、プロジェクトおよびプロジェクトメンバーに対してあげられるクリスマス・プレゼントは何ですか?

 20数名余の回答だったので、一般的なIT技術者の意識を代表する有効回答数になっているかどうかはさておき、SE・プロマネとも、大きく3つのプレゼントを希望していました。
 1つ目は、即物的なところで、お金と休暇。

 ・担当しているプロジェクトを円滑に進めた上で、顧客の評価を得、上司や会社の評価を得て、給与・ボーナス等を上げてほしい
 ・クリスマスには定時に帰りたい
 ・年末年始は(呼び出しの不安なく)ゆっくり休みたい

 2つ目は、より良い職場環境。

 ・クリスマスケーキや甘い物の差し入れ
 ・お互いの理解、承認、受容があり、一体感のある人間関係があること
 ・スターバックスを一日借り切って仕事をしたい。または、オフィスをスタバのような雰囲気にしたい

 3つ目は、より大きな仕事・プロジェクト。

 ・面白い仕事
 ・学べるプロジェクト
 ・やりがいのある仕事
 ・そのための条件として、「信頼」を得たい。顧客からの信頼、他のプロジェクトメンバーや上長から、その仕事を任せてもらえる信頼がほしい、という意見もありました。

 これらの希望に対する、
 SE一人ひとりのプロジェクトに対するメンバーシップとしては、
 プロジェクト環境を良くする取り組みとして、

 ・率先して「あいさつ」する
 ・メンバーが仲良くなるよう飲み会やボーリング大会等イベントを企画する
 ・困っているメンバーがいたら声かけする

 仕事・プロジェクトへの貢献としては、

 ・自分のタスクを予定通りオンスケに進めること
 ・担当した成果物を素晴らしいものにすること
 ・使い勝手のよい共通プログラム・共通クラスを提供すること
 ・作業効率が向上するツールを作成し提供すること
 ・バグのない品質の良いシステムを構築すること
 ・自分の能力・スキルを向上させて、他のメンバーの負荷を軽減すること

等が挙げられていました。

 一方、サンタクロース役となるプロマネやラインマネージャとしては、
 プロジェクト環境を良くする取り組みとして、

 ・メンバーのよいところを見つけ、ほめてあげること
 ・プロジェクトメンバーへ日々感謝すること
 ・飲み会等のイベントに資金援助すること

 仕事・プロジェクトへの貢献としては、

 ・理想のビジョンに沿った新規性のあるプロジェクトを受注すること
 ・プロジェクトにおける、業務面・システム面・マネジメント面でのチャレンジングな課題を明確にし、メンバーに挑戦する機会を与えること
 ・メンバーがこれまで経験したことのある規模の2倍以上の案件、より難度のある案件に挑戦させること。開発工程しかしていないメンバーには設計工程を、設計工程しかしていないメンバーには要件定義工程から参画させる

 そして、

 ・プロジェクトを通して、スキルアップと達成感を与えてあげること

 休日の確保については、

 ・残業や休日のコントロールを適切に行えるよう計画主導でプロジェクトを推進すること

 そして、すべての活動の結果として、

 ・メンバーの日々の努力や工夫を評価して、給与・ボーナスを上げること

を心がけてマネジメントしたい。

 ただし、新奇性があり、チャレンジングで、やりがいのあるプロジェクトや、本人のキャリア形成の一環として、難度の高い役割を与えることと、残業や休日の確保の優先順位づけについては考慮が必要になります。プロジェクトへのアサインは、メンバー一人ひとりと十分に話し合った上で、納得づくで行わねばならないことを再認識した次第です。

 クリスマス・プレゼントを渡しそこねたプロマネやラインマネージャの方は、お正月のお休みの間に、プロジェクトメンバーへのお年玉を準備されてはいかがでしょうか?