情報システム学会 メールマガジン 2008.7.25 No.03-04 [7]

新刊紹介
「中南米が日本を追い抜く日 三菱商事駐在員の目」

朝日新書 構成・石田 博士

 今年はブラジル移住100周年にあたり,メディアでも関連行事が取り上げられるなど,ブラジルへの注目が集まってきている。しかし,これまで日本では,ブラジルを含む中南米の事情については,イベントや事件について報道されることはあっても,ビジネスの側面から取り上げられることはほとんどなかったのではないか。本書では食糧,資源・エネルギーの宝庫としての中南米について,政治事情にもまれながら奮闘する商社マンの姿とともに語られている。

 最終章(7章)「知られざる先端産業<ブラジル>」では,技術力の高さ,高度に発達したITインフラといった,日本ではあまり知られていないブラジルの高度なIT事情が紹介されている。例えば,ブラジルでは1980年代からリアルタイム決済処理を行うなど金融インフラのオンライン化が進み,「その先進性と堅牢なセキュリティシステムは世界でもトップレベルにある(本書199ページ)」。優秀な日系ブラジル人技術者の存在も着目すべき点で,ブラジルと日本の橋渡し役として日本のIT産業の一役を担うことが期待できる。日本のITサービスベンダーにとっては,ブラジルと日本の時差を活かした24時間サービス体制も可能,など一読に値する。

(吉舗紀子)