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             情報システム学会 メールマガジン
                 2007.5.25 No.02-02
目次
[1] 理事が語る (副会長 竹並輝之)
[2] 第25回理事会報告(2007.5.19)
[3] 情報システム学会総会と講演会
[4] 「産業界からの論文発表を促進するための研究会」からのお願い
[5] 図書紹介「わざの伝承――ものづくりからマーケティングまで」

<編集委員会からのお願い>
 ISSJメルマガへの会員の皆様からの会員コラムへの寄稿をお待ちしていま
す。情報システムの実践,理論などに関するさまざまなご意見をお気軽にお
寄せください。
 また,会員組織による人材募集やカンファレンス,セミナー情報,新書の
紹介など,会員の皆様に役立つ情報もお知らせください。
 宛先は−−>メルマガ編集委員会(issj-magazine■issj.net)です。

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[1] 理事が語る  副会長 竹並輝之

 情報システム学会も設立以来2年がたち、5月19日に3回目の総会を無事終
えることができました。この間、事務局長として学会の運営に尽力してきま
したが、皆様のご支援、ご協力により会員数も360人を超え、定常的な運営
ルーチンは整ってきたと思っています。しかし、会員数が増え、多くの会員
からの要望に応えるサービスを提供するためには、ボランティア的な片手間
仕事の運営では限界があります。運営体制の整備が次の課題になってきまし
た。

 総会で、新役員が信任され、理事の互選で副会長に推されました。重任の
上野副会長と一緒にさらに情報システム学会の発展に微力を尽くしたいと思
います。総会での北城会長のご挨拶にもありましたが、新役員の任期である
次の2年は、学会の次の発展への基盤作りの期間となります。新しい事業の
企画、その基礎となる会員数の増強、システム作りの最前線を担う産業界と
の連携、情報システムをめぐる諸課題の改善に向けた提言などを推進しなけ
ればならないと思っています。

 さて、情報システム化が進み、我々の生活のほとんどすべてにコンピュー
タが活用されてきた現在、それに伴い新しい問題が起こってきています。そ
れらの問題の1つが若者のコンピュータ離れです。情報産業への就職が敬遠
され、中小ソフト業界は人集めに躍起になっています。
 若者のコンピュータ離れは、システム作りの仕事がきつくて難しくて厳し
い職業だという風評が誇大に喧伝されていることが原因だともいわれていま
す。これもあながち嘘ではないと思われます。このネットワークの発達した
現在でも、システムエンジニアの人々は、インターネットのなかった30年前
と同じように毎晩遅くまで会社で仕事をしているのが現実です。しかし、大
学で若者たちと接していると、これ以外にも原因があるような気がします。

 身のまわりの仕組みがほとんどすべてコンピュータを使って動いている現
在、若者にとってコンピュータシステムは与えられるものであり、出来上がっ
ているものなのです。それを作ることは人ごとなのです。手作業の時代を知
らない若者にとっては、コンピュータを使って仕事を改善して利用者に喜ん
でもらうというシステムエンジニアの仕事を理解するのは難しいのかもしれ
ません。また、パソコンや携帯電話が身近になり、それらを使った文章作成
やネットサーフィンの操作に習熟してしまうと、それでコンピュータは分かっ
たという気持ちになってしまい、未知のものへの好奇心、探究心が薄れてし
まうことも考えられます。私が若かったころは、まだ手付かずのコンピュー
タ応用分野がたくさんあり、人に先駆けてそれを勉強し、新しい応用を開発
してみたいという想いが情報産業への就職の動機であったと思います。世の
中の情報化が進んで、このような動機を見つけることが難しくなってきた現
在、若者のコンピュータ離れは必然の結果であると考えることができるので
はないでしょうか。

 それでは、これに対する対策はどうしたらよいのでしょうか。情報システ
ム学会では、このような問題にも会員の皆様と一緒に議論を深めていきたい
と思っています。よろしくお願いいたします。

html版は http://www.issj.net/mm/mm0202/0202-1-rk-tt.html
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[2] 第25回理事会報告(2007.5.19)

 月次に開催されている理事会の今回の議題は次の通りです。

議題1 総会事前打ち合わせ
議題2 新役員の分担
議題3 新入会員の承認
議題4 新研究会設置の承認
議題5 その他

 詳細はこちら
 → http://www.issj.net/gaiyou/rijikai.html
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[3] 情報システム学会総会と講演会

 第3回の情報システム学会総会が5月19日(土)に東京国際大学早稲田サテ
ライトキャンパスで開催されました。
 議案は次のとおりでした。
  第1号議案 2006年度活動報告および会計報告
  第2号議案 2007年度活動計画および予算案
  第3号議案 役員改選
  第4号議案 定款等の改定

 その後で講演会が行われました。
  講演1「情報システムへの新しい要求――IT産業の未来への一考察」
  中島 洋氏(MM総研所長、国際大学グローコム教授)
  講演2「セマンティックWebの現状と動向」
  山口高平氏(慶應義塾大学理工学部教授)

 講演終了後に会員の懇親のために,懇親会が開かれました。

 出席者は次のとおりでした。

  総会   51名
  講演会  64名
  懇親会  35名
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[4] 「産業界からの論文発表を促進するための研究会」からのお願い

 「産業界からの論文発表を促進するための研究会」では,会員から候補論
文を募集してます。
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[5] 図書紹介

 「ビジネス技術 わざの伝承――ものづくりからマーケティングまで」
 柴田亮介著 四六判・260頁 定価1,980円(税込み)
       日外アソシエーツ,2007年5月刊
 第1章 対談――響きあう伝統芸能とマーケティング 園田榮治,柴田亮介
 第2章 まなぶ,まねぶ――伝統芸能にみる知恵
 第3章 まなぶ,きわめる――ものづくりからマーケティングまで
 第4章 まなぶ,のこす――メソドロジーの開発
 第5章 企画・設計メソドロジーの具体例

以下に、著者の柴田亮介氏より当書籍に関して寄稿していただきました。
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 企画(設計、開発、編集などを含む)という仕事は重要で難しいわりに、
社会や企業で評価されていません。企画は案ができてしまうと、それを当然
のこととしてその後の仕事が続きます。仕事が終了して打ち上げる際には、
企画者に声がかかることは稀です。なぜなら、企画はかなり前のことで皆の
頭の中から忘れ去られていることが多いのです。そのような存在、役割とし
か評価されていないことが残念です。そして、再び新しい企画の仕事がきま
す。企画がなければ何もスタートできませんから、依頼者は平身低頭してき
ますが、のどもと過ぎれば・・・・・、忘れてしまうというような扱いをう
けます。どうしてこのように企画者の立場、社会的地位は低いのでしょうか。

 企画はいつも新しい仕事です。ですから、マニュアルというようなものは
ありませんし、必要がありません。しかし、いつも企画をゼロから始めてい
るということも疑問に思っていました。企画の上位の概念、構造システムが
あるのではないか、ということです。私が電通の3年目に担当したMAPシ
ステムの開発を思い起こしてみますと、それはまさに企画のための計画シス
テムであったのです。MAPとは、Marketing & Advertising Planning
Systemの頭文字を取って付けられた、マーケティング体系に位置づけられた
広告計画の立案作成のシステムです。MAPシステムに沿って計画していく
と、どんな広告計画も作成できるという画期的なものでした。若い人たちに
とっては実に心強い味方となって広告実務の向上に大きな働きがありました。
しかし、ベテランにとってはそれまで培った自分のノウハウが否定されたよ
うに映ったのでしょうか、多くのベテラン企画者が反発をもったことも事実
です。また、MAPシステム自体もまだ荒削りであったことも反発の原因で
あったと思います。社内では、その後社員教育に使われつつも次第に誰もM
APという言葉も口にすることがなくなり、皆から忘れ去られていきました。
今思うと、MAPシステムを時代の変化や要請に先駆けて改良、発展させて
いれば、電通、いや広告界・産業界の大きな財産になっていたのではないか
と思っています。

 それでは企画のノウハウ、わざをどのように発展させ、次世代へ伝承して
いったらよいのでしょうか。ものづくりのわざに比べて企画のそれはわかり
にくいという弱点をもっています。ものづくりの製造工程には型があり、製
品は力強く<わざ>を表現しています。一方、企画のアウトプットは多くの
場合、紙やコンピュータの画面上に表されるだけなので、その働きや効果が
みえにくくその<わざ>を理解することは難しいでしょう。また、出来上がっ
た企画書を見ると、これなら自分にもできそうだ、と簡単に思う人もいます。
これはコロンブスの卵です。企画の仕事は個人の能力に負うところが大きく
て、その難しさや苦労を他の人が理解し触れる機会ことが少ないが原因の一
つではないでしょうか。

 能の芸を後世に伝えようとして世阿弥が書き表した"風姿花伝"は、優れた
指導書です。「能の本質は<花>である」と明快に表現し、芸の頂上へたど
り着くための心構えを表していますが、企画の仕事にも十分参考になること
がたくさんあります。そして、指導書としていたずらにこまごまと書き連ね
るのではなく、役者の態度、心構えという役者の根本を押えているのが特徴
です。ものづくりに比べ企画は、その土台となる<型>をもっていないこと
が指摘できます。日本の古典芸能は400〜500年にわたって至高の芸を
伝承してきました。その伝承の基盤は<型>です。師は型を通して弟子を教
え、弟子は師の教える型をまねることから修行が始まります。弟子は、教え
られた型が充分自身に身についたとき、改めて自分の型を新しく創造する修
行に向かいます。多くの名人、達人の舞台や稽古をみて、自分の芸を磨かね
ば一流の芸達者にはなりません。企画の<わざ>を深耕し、発展させるため
にも、<型>の開発が欠かせません。丁度、MAPシステムは、企画の<一
つの型>に相当すると思います。次世代に企画の<わざ>を伝承するために
は、古典芸能が培ってきた伝承のための創意工夫に多くのことを学ぶ必要が
あります。

 風姿花伝は、能の芸を伝承する<型>の役割を担っています。この型は、
時代を超えて観客の期待にこたえるために"融通無碍"に変容していく広い意
味での型、つまり型であって型でない、といえます。まさに、伝承のための
<型>は、日本人的な感覚で大きく捉えるべきでしょう。風姿花伝は、能芸
の頂上へ向かうための考え方(心構えを含む)と方法を体系化し、その内容
を問答形式などによってわかりやすく説明しています。これに加えて常に新
しい感性と工夫を組み入れるように厳しく教えています。私は、風姿花伝は
マニュアルを超えたメソドロジーだ、と思います。建築、教育、出版、営業、
マーケティング、システム開発など、個人の<わざ>が大きく働く仕事には、
メソドロジー開発が欠かせないと思います。いつも問題解決がゼロからス
タートしているようでは、各分野におけるわざの深耕、発展ができないばか
りでなく、これからの社会ニーズや市場競争の要請にこたえていくことはで
きない、と思うからです。

 この本で紹介しているのはメソドロジーの原型であり、マーケティングリ
サーチ プランニングについてはさらに具体例を挙げメソドロジーのイメー
ジをはっきりさせようと試みました。私は、各分野でメソドロジーを応用開
発していくことを提案します。この本がきっかけとなって、本格的なメソド
ロジー議論が沸き立つように期待しています。

                         2007年5月 柴田亮介

html版は http://www.issj.net/mm/mm0202/0202-5-bk-rs.html
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