情報システム学会 メールマガジン 2011.8.25 No.06-05 [7]

連載 著作権と情報システム
第29回 文化庁案 著作権審議会第六小委員会中間報告(21)

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(21)

VIII 救済制度
 著作権法をプログラムに適用した場合の権利侵害に対する民事上の救済措置としては、(1)差止請求権(著作権法112条第1項)、損害賠償請求権(民法第709条、第710条)、不当利得返還請求権(民法第703条)、損害額の推定(著作権法第114条)、名誉回復等の措置の請求(著作権法第115条)、が認められている。特に、損害額の推定は、著作権、出版権、著作隣接権が侵害されたとき、権利者側が損害額の立証が困難であるため、権利者保護により損害額の挙証責任の転換を図ったものである。
 中間報告では、簡単にプログラムの複写が可能であることなどプログラムの権利侵害が行われやすいことから、損害賠償について被った損害の2〜3倍の賠償を請求できるようにしてはどうかという意見もあったが、プログラムだけにそのような高額な賠償を認めることはできず、結果的に他の無体財産権の保護全般に影響を及ぼすこと、プログラムに特別措置を講ずると、現行の著作権法体系上にも問題が生ずることから、不適切であるとされた。また、プログラムについてのみ、権利侵害による挙証責任の軽減や転換を図ることも不適切とされた。
 また、プログラムに関する権利侵害訴訟は、高度な専門技術の知識で必要であるものが多く、しかも時間が経過すると損害が大きくなることから早期解決が望まれたため、積極的にあっせん制度(著作権法第105条〜第111条)を活用すべきであるとされた。法的拘束力もある仲裁や調停も必要と言う意見もあった。

引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年